HOME » 痛みの症状と原因 » 6.腰痛・下肢の痛み

6.腰痛・下肢の痛み

腰痛・下肢の痛み

腰痛・下肢の痛み

一生のうちに80%の人が腰下肢痛を経験すると言われ、その割合も年々増えています。受診される患者さんに占める腰下肢痛の割合も年齢とともに多くなっていますが、第一の要因は寿命が延びたためでしょう。

 

高齢者の腰痛、下肢の痛みの原因は、若い時の椎間板ヘルニアと腰椎の変形が合併し、脊髄の通り道が狭くなった、いわゆる背骨の老化現象が主体で整形外科的手術療法の対象にならないものが大部分です。

 

そのほか女性では骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が原因になった背骨の骨折が原因になっていることもよく見られます。

 

硬膜外ブロックという腰または尾てい骨のあたりから行われる注射によって、歩行時の痛み、歩行距離はかなり改善します。当初は週に2回程度の治療を繰り返し、症状の安定が得られた時点で週に1度程度の治療となりますのでそれほど通院の負担はありません。

 

よく患者さんの訴えに負けて漫然と速効性のステロイド剤の注射を続けている症例に出合いますが、これは様々な面から好ましいことではありません。

 

ギックリ腰

ギックリ腰(急性腰痛症)は症状名で、腰骨の間にある軟骨のケガである椎間板障害、腰骨間の関節の捻挫である椎間関筋症などが原因です。

 

ギックリ腰は突然前触れもなくおそってきます、症状の強いときはまったく身動きができなくなるほどです。

 

レントゲンや年齢・性別・症状から、原因を診断し、それに適した治療を始めます。治療は安静が基本であり最も効果的です。若い方であれば1、2週間で安静にしていれば大部分のものは治療します。

 

しかしこの時代、仕事家事で1,2週間も休みを取るのはなかなか大変なことです。少しでも症状を早く改善し、仕事に復帰するために効果的なのが神経ブロック療法です。

 

神経ブロック療法は痛みを止めると同時に、血流を改善し、腫れ上がった神経を鎮静化します。また痛みによって起こっている筋肉の緊張もほぐして治療効果を上げます。

 

治療効果がなく症状の改善が見られないときはMRIという検査が必要です。高齢者では骨粗鬆症からくる背骨の骨折などが原因のこともあります。

 

不可解な症状を示す例にはCTやMRI検査を合わせて行うことが大切です。単に腰痛症で受診した患者さんに、癌の腰骨への転移、腰骨の結核、泌尿器科系の癌、膵臓の癌、腹部大動脈瘤など腰以外の病気が発見されることがしばしばあります。

 

腰椎椎間板ヘルニア

高齢者に起こる腰痛症と比較して、若い年代の腰痛症や坐骨神経痛の原因として多いのが、椎間板ヘルニアです。

 

椎間板ヘルニアは、腰骨と腰骨の間にあるクッションが破れて中身が飛び出して、神経に当たっているものです。

 

以前には「椎間板ヘルニアが自然に吸収されていく」ことはないと、されていました。

 

しかし、阪神大震災で手術予定の椎間板ヘルニア患者が手術できないままに放置され、その後症状が無くなったために、再検査したところ「約半数の患者さんのヘルニアが消失または縮小していた」と報告されました。

 

日本では、この報告がなされてから椎間板ヘルニアの手術は、患者さん全体の30%であったものが、15%に半減していました。ただし、尿や便が上手く出せない、漏れる、足に力が入らない場合は、手術が必要とされています。

 

また、椎間板ヘルニアによる痛みの大きさは、神経の炎症の激しさで決まり、ヘルニアの大きさとはあまり関係がないという報告があります。

 

正常な神経は、先の丸いもので押しても痛みは感じません。ところが、神経が炎症状態、すなわち頭をぶつけて、たんこぶが出来ている状態では、ちょっと押しただけでも強い痛みを感じます。

 

ペインクリニックでは、炎症を鎮める薬を注射する硬膜外ブロックや、神経根ブロックを行っています。
 

硬膜外ブロックなら外来で治療可能

硬膜外ブロックは外来で治療が可能です。

 

神経根ブロックは押されている神経に直接薬を注射するため、半日以上足に力が入らなくなりますので、1泊入院が必要です。硬膜外ブロックや神経根ブロックによって、痛みは劇的に軽くなり、痛みに悩まされる期間も短くなります。

 

炎症が良くなっても痛みが続く場合、特殊な針で椎間板の中身を少し取り出し、飛び出した部分の圧力を弱める治療があります。圧力が弱まると神経を押す力も弱まるので、痛みが楽になります。

 

椎間板減圧術という方法ですが、安静のため2泊3日の入院が必要となります。
通常の健康保険での治療が可能です。

 

痛みが取れたからといって、すぐに長距離ドライブやゴルフに出掛けてはいけません。痛みがあるつもりで、傷ついた椎間板をかばいながら回復を待つことが大切です。

 

当院では、まず硬膜外ブロックの治療を行い、どうしても痛みが治まらない場合に神経根ブロックや椎間板減圧術を考えるようにしています。

 

神経根ブロックと椎間板減圧術は入院が必要ですので、痛みの強さと患者さんの都合を合わせて考えたうえで、入院設備のある本院に入院して治療を行う形になります。

 

仕事が忙しくてどうしても入院できない場合は、硬膜外ブロックで通院治療が出来ますのでご相談ください。
 

ペインクリニックで行う治療

ペインクリニックで行う神経ブロック療法は、あくまでも痛みを止め血流を改善して、
痛いから血管が縮む→血管が縮むから血の巡りが悪くなる→血の巡りが悪いから益々痛くなる・・・という痛みの悪循環を改善して自然治癒力を引き出す治療
ですので、なかなか効果が出ない場合でも治療を受ける側と治療を行う側の双方に根気よく治療を続ける辛抱強さが必要です。

 

また生活面では杖を使用して少し前かがみに歩いてもらうのが一番効果的です。骨粗鬆症の強い方はその治療もあわせて行われます。

 

まれにこの部分に発生した腫瘍や癌の転移によることもありますので、MRIやCTといった精密検査で原因を突き止めたうえでの治療も大切です。